出荷ベースとは文字通り 工場から出荷された数量実績や金額実績のこと。分野にもよるが、商品が通常工場で作られてから消費者の手に渡る(販売される)までにかなりのタイムラグがある。小売店などの売上(実際に売れた数)を元にした数字は販売ベースと呼ぶ。

もともとは会計基準で、どの時点で売上を計上するか?による。
早い時点で売上を計上すると動向が早く把握できるが、キャンセルや不良在庫などがあった場合は実際の販売動向とは乖離が生じるケースもある。 

 

①発注基準
ユーザからの発注の瞬間に売上を計上

②出荷基準
パソコンの製造が終わり、工場から出荷した瞬間に売上を計上

③納品基準
最終顧客のところまで運搬が終わり、商品が最終顧客の手に渡ったところで売上を計上

④検収基準
最終顧客側の納品物チェックが終わった時に売上を計上


※その売上が本当に現実のものになるかは、計上タイミングが早ければ早いほど不確定になる。

①発注基準では、ユーザーがキャンセルすればアウト
②出荷基準でも、ユーザーがキャンセルすればアウト
③納品基準でも、不良品等でキャンセルされればアウト
④検収基準で売上を立てるのが、一般的には最も確実性が高い売上


上記以外の概念として

⑤生産出荷基準

と言うのもある。生産出荷とはある製品が生産拠点、すなわち畑や工場から自社倉庫に出荷されること。またその数を表す単位。主に生産数と出荷数の乖離が発生しやすい農業や工業(最終工程)などの第一次産業で使われている。



農業を例に取った場合
 
生産者(農家)→【生産出荷】→農協→【出荷】→市場→小売店→【販売】→消費者



工業製品の「生産出荷台数」
 
資産価値が高く生鮮品と違い各業者の倉庫へ長期間溜めておくことができそうな工業製品は・・

「生産出荷数」
「出荷数」
「販売数」

を厳密に区別する傾向があった。

生産出荷数は完成した商製品に対する数であり、旧来の流通システムでは消卸売業者へ出荷しない限り資産として積み上げられる。

しかし・・

近年の生産拠点のグローバル化
メーカーによる直接販売方式の拡大
流通方式システムの多様化
ネット通販などの流通革命

により、製造業では卸売を経由しない複雑な販売形式が台頭。

このような販売ルートを積極的に採用しているメーカーにおいては、従来の定義による

「生産出荷数」
「出荷数」

の管理と把握、区別が不可能となった。


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IFRS 適用後の「出荷基準」は適用できるのか 


(1)製造業

国際会計基準においては、出荷基準が認められないことが多いと考えられている。

理由
「物品の販売」における収益認識の要件「物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値の買手への移転」が認められない場合が多いから。
 
しかし、「出荷時点でリスクと経済的便益が移転する」と認められる契約であれば、国際会計基準の下においても出荷基準が認められる可能性はある。

※2010 年 4 月に金融庁が公表した「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」では「取引の形態によっては、着荷や検収の事実を一々確認しなくても、出荷の事実をベースに、配送に要する期間等を考慮して、合理的にリスクと便益の移転が認められる場合、その時点で売上の計上ができる場合がある。」との記載がある。
 
郵便物など、出荷から到着までの期間が 1 日~2 日と短いものについて、出荷時点で収益認識している例などもある。

工場へ部品を納入するなどの取引が行われる場合において、工場に部品が届いた時点で収益認識が必要な場合に、出荷時に到着日を予想し、予想到着日をもって収益認識している例もある(みなし着荷基準)。 





 (2)自動車産業(新車売上)
 
国際会計基準のもとにおいては、物品の所有に伴う重要なリスク及び経済価値が、新車の登録時点で移転していると考えることは難しいと考えられ、納車時に自動車販売会社から、ユーザーに対して移転したと考えるのが自然であると思われる。




(3)小売・消費財産業

百貨店やスーパーマーケットなどの小売業の慣行として「消化仕入れ」がある。「消化仕入れ」とは小売店に陳列する商品の所有権を卸業者やメーカーに残しておき、小売店で売上があがったと同時に仕入が計上されるという取引形態。「消化仕入れ」と「委託販売」とは違う。「委託販売」は伝票を入れて商品を預り、仕入元の代わりに販売するので、販売手数料が発生する。返品されなかった商品の分だけ仕入金額を支払う。

国際会計基準においては、消化仕入れについて、総額表示とするか純額表示(手数料相当額のみ)、とするかは、企業が本人として取引を行っているのか、代理人として行っているのかで判断される。消化仕入が行われる場合、百貨店などは商品の価格変動リスクや保管リスクにさらされていないので、代理人取引と判断される。したがって、商品の販売代金と仕入れ代金の差額を手数料収入として認識する純額表示とすることが適切と考えられている。