「民泊」とは一般の民家に泊まること。 始まりはほとんどの場合無報酬で行われていた。 現代のように交通機関や宿泊施設が整備されていなかったとき、無償で見知らぬ人にご飯を上げたり、宿を提供することはそれほど珍しいことではなかった。民泊は範囲が広く、以前から農林漁業分野、特に農業における体験型の民泊はよくあった。バックパッカーが働きながら、無料で泊めてもらいながら各地を巡るアレ。


観光庁によれば、日本国内の延べ宿泊者数は急激に増えている。

平成21年3.0億人泊、うち、外国人宿泊者数約7.0%
平成26年4.7億人泊、うち、外国人宿泊者数約9.5%


まで増えて、増加傾向は平成27年も続いている。

2016/5、政府は、一般住宅を旅行者の宿泊施設として有料で提供する「民泊の」全面解禁に向けた原案をまとめた。「民泊サービスのあり方に関する検討会」も、有識者を交えて昨年11月から10回を重ねていた関連する業界関係者からのヒアリングを5月いっぱいまでで終える。今後は、旅館業法免除特区とは別の議論となる“全国的な民泊解禁”についてのルールが6月にはまとめられ、閣議決定を経て施行される運び。

突然の規制緩和の動きに、業界の一部は色めき立っている。

急増する外国人観光客と客室数不足で注目されているのが、ビジネスとしての民泊。集客はAirbnbなど民泊提供サイトに頼り、手数料だけ支払う低コストの運営。物件は自分で所有しなくても、賃貸して転貸することで、所有コストもなく始められる点が大きく、Airbnbを使って収益を上げている事例は多数ある。

例えば、賃貸で月10万円の部屋を、1泊5,000円で貸しても、8割稼働で十分に採算が合う。1万円で貸すことができれば10日で元が取れる。

 

しかし、ここに来て、「民泊」の深刻な問題点も指摘されている。

2016/3/17、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(以下、全旅連)の招聘により、フランスのホテル&レストラン関連業界団体を招き「基調講演:民泊の不都合な真実~世界最大の観光大国フランスで起こっていること」と題した緊急フォーラムが都内で開催された。フランスからは、ホテルGNI会長のディディエ・シュネ氏、UMIHホテル部門会長のローレン・デュック氏らが参加した。が「民泊の不都合な真実」を訴えた。

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「もうフランスはAirbnbにやられてしまった。日本はまだ間に合う、フランスと同じ轍を踏まないでほしい」

「現在フランスでは1日に1軒のホテルが廃業か倒産に追い込まれているのです」

「アパートなどの所有者がより利益の上がる民泊営業に物件を回したため、パリ市内の家賃相場は数年で急上昇していきました。賃貸契約の約25%が契約更新されず、住人は住居を失い高額な物件を探してやむなく賃貸し直すか、郊外へと引っ越しを余儀なくされた。特に観光客が多い地域では、住民が減り学級閉鎖に陥る学校も出ています」

(シュネ氏)

「Airbnbは、多くの脱税を生み、業界の雇用を奪い、必要な人が普通にパリに住む環境を不当な競争によって破壊している」

「パリの同時多発テロで民泊が潜伏先として使用された事実は、日本ではあまり報道されていません。しかし、我々は鬼の首でも取ったかのように、そらみたことか、テロに民泊が使用された!とその部分をことさらに強調しませんでした。フランスの多くのマスコミもそうでした。我々は政府の民泊推進・容認、制限付き容認、民泊反対派などと、多くの交渉チャンネルとしてのパイプは持っていなければならない。それらを失わずに今後も言うべきは言い、活動と交渉をしていかなければならない」

(デュック氏)
 


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◆フランス代表が提案した民泊の改善すべき点

「Airbnbのイメージ戦略とその実情は全く違う。匿名性を徹底的に潰して下さい。すでにフランス全土に拡がり、取り返しがつかないほどAirbnbにやられてしまったフランスとパリの現状をよく見て下さい。日本はまだ今なら間に合う、フランスと同じ轍は踏まないで下さい。良識ある日本の皆様のご検討をお祈りしております」

民泊は旅館業法上の簡易宿泊所に統合され、①自宅を使う民泊と②ビジネスとして展開する民泊、は分けて考えられている。その際、Airbnbを始めとする民泊マッチングサイトと新規派生ビジネス、委託関連ビジネスに対しても、何が合法で何が違法かを徹底周知させなければならない。